「 パーフェクト ワールド 」
(1993年 アメリカ 138分)(あらすじ)
1963年秋のアメリカ合衆国テキサス州。テリー(キース・サセバージャ)と共に刑務所から脱獄したブッチ(ケヴィン・コスナー)は、逃走途中に民家に押し入り、8歳の少年フィリップ(T・J・ローサー)を人質に逃亡するが、ブッチはフィリップに危害を加えようとしたテリーを射殺する。ブッチを追跡する警察署長のレッド(クリント・イーストウッド)は、ブッチが少年の頃、彼を更生させるべく少年院に送った元保安官だった。だが、ブッチはそれを契機に常習犯となり、ついには脱獄するまでに至ったことからレッドは責任を感じ、自らの手でブッチを逮捕しようと思っていた。レッドの捜査には犯罪心理学者のサリー(ローラ・ダーン)が同行することとなり、彼女はレッドの強引なやり方に反発しつつも徐々に打ち解けていく。一方、エホバの証人の信者である母親との母子家庭で育ち、厳しい教義からハローウィンやクリスマスを始めとした楽しみは何一つ与えられなっかたフィリップに対して、彼の“禁じられた楽しみ”を実現するとともに、父親のように男らしく彼に接するブッチ。いつかそこに“男の友情”が生まれていく・・・
(レビュー)
この作品はクリント・イーストウッド監督作品としては前年の1992年の「許されざる者」でアカデミー賞4部門を受賞した直後の作品で、この「パーフェクト・ワールド」やこの後の「マディソン郡の橋」あたりからヒューマンドラマ路線が増えてきており、彼にとっては転換期の真っ只中にある作品と言え、彼のファンにとっては欠かすことの出来ない要チェックの作品であると言えるだろう。
さて「ミスティックリバー」や「ミリオンダラーベイビー」などその作品の持つ暗さに、監督としてのクリント・イーストウッドに軽い苦手意識とフィーリングの違いを多少感じているオイラであるが、この作品に関しては実はもう一つ苦手な要素を含んでいた。ずばり、ロードムービーとしての要素である。ロードムービーの類をそんなに好き好んで見てきた訳ではないので多くは語るべきではないかもしれないが、ストーリー的な起伏のなさやセリフの少なさはどうもオイラは苦手である。しかし確実に不安要素が2つあったにもかかわらず、この作品は見事なバランスにより成立しており、監督してのクリント・イーストウッドの力量をまざまざと見せつけられたと感じた。
まず印象的なのはケビン・コスナー演じる主人公ブッチ。彼の主人公としてのキャラクターの設定はどこか西部劇に通じるものがあり、この辺は監督の得意分野とういうのもあるのだろうか、ケビン・コスナーの存在感もあってなかなか魅力的な設定に仕上がっている。次にやはりこの物語は子供が重要なキーワードになっていたのがよかったのだろうか。下手をするとまたもや暗くなりそうなストーリー展開も、最後のシーンといい子供のセリフや表情が、物語を無垢でいて純粋な白いイメージとしての開放感につつみこんでいる。「ミスティックリバー」や「ミリオンダラーベイビー」の後味が、どこか黒い閉塞感のようなものを感じさせたのとは対照的だとも言えるだろう。最近のクリント映画が苦手なオイラのような人でも十分楽しめる作品だ。(2007年10月8日)
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