「 ラブソングができるまで 」
(2007年 アメリカ 104分)(あらすじ)
1980年代に一世を風靡したバンドPOPの元ボーカルでありながら、今やその名声もどこかへ行ってしまったアレックス(ヒュー・グラント)の元に人気歌手のコーラ(ヘイリー・ベネット)から新曲の提供の依頼がきた。アレックスが曲を作りあぐねている時にたまたま代理として植木の手入れに来たソフィー(ドリュー・バリモア)の口ずさんだ歌を聴き、その才能を直感し作詞を依頼するが・・・。
(レビュー)
いきなり始まる架空の人気バンド"POP"のナンセンスなプロモーションビデオ、なかなかこれがイケている。主演のヒュー・グラントは実際の80年代の超人気バンド"デュラン・デュラン"を参考にして、あのおもしろプロモを作り上げたらしい。ここで80年代のプロもなんて見たことねえ、というティーンエージャーのために説明しておくと、実は当時はあれが当たり前で、ボーリング場なんかの上についてあるモニターからは、恥ずかしくもなく延々とああいったのが垂れ流されていたのである。当時はアレが"ナウかった"のであり、ああいったダサさと今とのギャップを笑うのもこの作品の狙いの一つかもしれない。
ところが見所はココまでである。恋愛音楽映画の前フリとしては十分ながら、その本体である恋愛ドラマは恋愛の定番物としてはチープの一言である。印象としては結局あのおもしろプロモがピークだった。まず、恋愛映画やこういう音楽業界を描いたストーリーに大きなひねりは必要ないものの、いくらなんでもひねりがなさすぎじゃないだろうか。懸命なダイエットをして?すっかりキュートなドリュー演じるソフィーであるが、アレックスとの出会いと才能の発掘があれだけとはいくらなんでもすっ飛ばしすぎだろう。そして肝心の二人の性格や好みも描ききれているとは言いがたい。この辺りの人間描写が不十分なところが、感情移入という点につながらず、恋愛映画としてイマイチだったところだろう。残念ながらやさしくしてくれたから好きになったでは、小学生向けの恋愛である。下手をすると序盤のプロモのナンセンスぶり(これは確信犯なのでしょうがないが)を絡めてしまうと、B級恋愛作品といってもあながちハズレでもないだろう。
次にせっかく音楽という割と扱いやすいテーマと取り上げながら、それを生かしきれているとは言いがたい。メインの曲はさすがにちゃんと用意されているものの、それがコンサート中のワン・オブ・ゼムではさすがにちょっと悲しすぎる。やはりこういう映画の定番は恋も曲もハッピーエンドである。せっかく自分達の作った歌が公になるものの、現実どおり作曲家と作詞が裏方のままでは、結局裏方どおしの恋愛物語である。定番らしい恋愛音楽映画で行くのならアレックスがスターに返り咲いて、ソフィーも舞台に上げてしまうぐらいの定番ぶりが欲しかった。邦題「ラブソングができるまで」というタイトルとはよくつけたものである。できた後は知りません。そんな声も聞こえてきそうな作品だ。 (2007年10月14日)
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