「アイ,ロボット」
( 2004年 アメリカ 115分 )(あらすじ)
西暦2035年、ロボットは既に人間のサポート役として日常生活に溶け込んでいた。そんな中、U.S.ロボティックス社は新たに開発した次世代家庭用ロボットNS-5(ネスター・ファイブ)型を出荷しようとていた。しかしその直前、ロボット工学の第一人者であるラニング博士が U.S.R.本社ビルで殺害される。容疑者は「サニー」と名乗る人間に近い感情を持つNS-5型ロボット。ロボット三原則により、絶対に人間に危害を加えないはずのロボット。はたして殺人犯になり得るのだろうか?ロボット嫌いのスプーナー刑事とロボット心理学者のカルヴィン博士は、その謎を追及するうちに、やがて、驚愕の事実を知ることになる・・・。
(レビュー)
この作品はロボット三原則の提唱者である、アメリカのSF作家アイザック・アジモフ( Isaac Asimov, 1920年- 1992年)の『われはロボット』(I, Robot)を出典として物語は構成されている。
さて内容であるが、CGやデザインなどははさすがにお金もかけられており、近未来ポサが良く出ている。劇中にてアウディ製による車も登場するがコレが中々格好いい。世界観はよく作りこまれており、SF好きにもなかなか満足できるクオリティではなかっただろうか。入り口の部分では突っ込みどころもなく完璧である。
しかしながらこの作品は、肝心のロボッットが登場してきたあたりから物語はおかしくなってくる。まずロボットの目だけは人間ぽく作られているものの、そのスタイルは どこか古臭い。古いタイプのロボットも登場するわけであるが、バリバリの機械都市に感じた序盤に対して、多少粗さが目立ち始める。そして中盤から、終盤にかけてアクションも本格的になってくるわけであるが、このあたりになってくると、もう超ハイテクな未来という感じは完全に失われいる。主人公演じるウィル・スミスがローテクを駆使する人間だとしても、その周囲の小物などが完全に現代そのものである。このあたり現代のバイクなどを使用しながらも、さらりと現代にはないハイテクを使いこなすなどの工夫があれば、よりリアリティが出たことは間違いないだろう。
また、最後のアクションはちょっとやりすぎだった。せっかくこのストーリーにはロボット三原則という多少なりとも高尚なテーマがあったものの、最後の最後にきて虫の大群のようなロボット達の動きや戦いがすべてをぶち壊してしまったような気がする。ドタバタもドタバタである。この辺はマトリックスの最終作と同じ失敗だろう。ご都合主義な展開はSF映画だから構わない。子供から大人まで楽しめる内容なのがこういったSF作品のいいところなのだから、せめて序盤に掲げたテーマと雰囲気を壊さずに最後まで行ってほしかった。
ウィル・スミスがウィルスミスらしく出演しているが、結局それだけの作品である。前半がなかなか良かっただけに、後半ドタバタぶりが残念である。でも、ウィークエンドにポテチでもかじりながら軽いノリで見る分にはピッタリな映画だろう。(2007年5月27日)
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