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「 シティ・オブ・ゴッド 」
(2002年 ブラジル 130分)(あらすじ)
1960年代後半、ブラジル・リオデジャネイロの貧民街“シティ・オブ・ゴッド”では銃による強盗や殺人が絶え間なく続いていた。そこでは3人のチンピラ少年が幅を利かせている。ギャングに憧れる幼い少年リトル・ダイスは彼らとともにモーテル襲撃に加わり、そこで初めての人殺しを経験すると、そのまま行方をくらました。一方、3人組の一人を兄に持つ少年ブスカペは事件現場で取材記者を目にしてカメラマンを夢見るようになる。70年代、名をリトル・ゼと改めた少年リトル・ダイスは、“リオ最強のワル”となって街に舞い戻ってきた…。
(レビュー)
日本の裏側で撮られたこの作品、一部は除くものの主役キャストを含めて実際に現地のスラム街で素人を募集して、オーディションと演技訓練を施し、素人200人によってアドリブ主体の演技で撮影は行われたという。しかしながら何てことだろう、斬新でいてスタイリッシュなカメラワークと編集も手伝ってか、そんな匂いは全く感じさせない。それどころか何の予備知識もなく見れば、これがブラジル映画ということに2度ビックリさせられる。あの元レアル・マドリードのおちゃめなブラジリアン"悪魔の左足"ことロベルト・カルロスでさえ車に乗っていて(電話でラジオ出演している最中に)普通に強盗に遭う国である。経済規模と同様映画も大したことないだろうと思いこんでたら、この作品を見る限り映画後進国は残念ながらコチラのほうだったということに気付かされ、打ちのめされた。
とにかく、序盤からアクセル全快だ。テンポのいいリズムに乗って、淡々と鶏をさばいているシーンが何となくこの映画の内容を暗示していている。なんだか訳の分からぬうちに物語りは始まるものの、リズムとテンポが抜群ですぐに映画の中に観客は引き込まれる。また、登場人物が子供時代も含めて、割りとたくさん登場するものの、キャラクターが良く立っていたり編集のうまさも手伝ってか、見てて混乱しないのもこの作品のいいところだろう。素直にストーリーとノリを楽しむことができる。この物語の背景はご存知のとおり、実話が元になっているらしく決して笑える物ではないものの、平然と人殺しやマリファナ・コカインといった麻薬に子供が関わっているのを、シリアスさをもたせることなく平然と、しかも笑いながら行っているのが、逆にリアリティを感じさせ衝撃的だ。またほとんど劇中にはほとんど皆無である主人公のようなまともな感性の持ち主も、時にはギャング達と楽しく同じクラブで踊っていたりして、スラムというか街の特殊性をよく現している。ここでまっさらでいて純真なだけの主人公だったのなら、この作品のもつダイナミズムは失われていたところだろう。また主人公という第三者的な目線で描かれているのが、ストーリーに重苦しさや息苦しさを与えるのを軽減している。
現代にもある南米のスラムの現実をさらりとそして痛快に描いた問題作、ただこういう内容は決して日本にも無いはずではない。日の当たる世界があれば、確実に影の部分が存在する。日本人の監督もそういったところに、もう少し日をあててもらいたいものである。
ただ、ノリで進むのには長い内容だったので、ちょっとだけマイナス。(2007年10月21日)
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